名探偵、初心者ですが

ふと本を読みたくなって手にとったこの一冊。作者は歌野晶午さん。著書の「葉桜の季節に君を想うということ」が「このミステリーがすごい!」や「本格ミステリ・ベスト10」の一位に選ばれている実力者だ。

さて、今回読んだこの作品だが「名探偵」「初心者」というワードからてっきり主人公の刑事の姪っ子であるひとみちゃん10歳が謎を解いていくのかと思っていたが、おじさんである主人公がひとみちゃんとの何気ないやりとりの中で事件解決の糸口を掴むといった流れの連作推理小説となっていた。

私は深読みする方なので、実は無邪気に振る舞うひとみちゃんが全て知っていておじさんにヒントを与えているのかもしれないと疑ったが、そもそもおじさんが家族にも口外していない情報を元にしなければ推理が成り立たないのでひとみちゃんはあくまで無自覚な名探偵ということだったようだ。

この作品、帯に事件の結末さえも伏線、どんでん返し6連発というようにそれぞれの事件が実は意外な形で繋がっており、事件の一つ一つはあっさり解決するもののテンポよく読者を飽きさせない作りになっている。お陰で私は一気に読み終えて良い一冊に出会えた満足感とともにもっと続きを読ませて欲しいという物足りなさを同時に感じさせられた。

というのも、このどんでん返しの中には私好みの結構エグい「実は」が仕込まれているものがあり、人間の汚さを見るのが好きな私はこの作者さんいい意味で性格悪いんだろうなと失礼な想像に頬を緩ませてしまったものだ。

作中の舞台となった街は登場人物が指摘するほど凶悪事件が続くのだが、こうなってくると実はこれらはもっと大きな事件に繋がっているのではないかという期待を抱いてしまう。

そんな本作だが、その6年後を描いた「誘拐リフレイン」という続編も出ている。この作品を気に入った方なら17歳の舞田ひとみが前代未聞の事件に挑む!という煽り文句に抗えないだろう。

私も次に読む本は勿論この誘拐リフレインに決めている。

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