オンリー・ザ・ブレイブ

なにか面白い映画はないかとネットを漁っていてたどり着いた本作。アメリカ、アリゾナ州で発生した山火事で消火活動に当たった消防隊員19名が命を落としたという実話を元にした映画である。

今年の2月に我が国でも栃木の山火事がニュースで報じられた事もあり、山火事に対する消化活動に関心を持っていた。

この作品に出てくるのは水を使わない消防士だ。彼らは山火事が発生すると20キロもの装備を背負って山に入っていき、燃料となる樹々を伐採したり溝を掘る事で延焼を食い止める防火帯を構築、時には迎え火と言ってこの防火帯に沿って敢えて火を付ける事で迫ってくる山火事を迎え撃つなどして山火事をコントロールして鎮火に当たる。火をもって火を制するという我々には想像も付かないような知識と技術を備えたプロフェッショナルである。

本作品の前半は市の消防隊がホットショットと呼ばれる農務省直属の精鋭部隊への昇格を目指す流れが描かれている。地方自治体の消防隊に過ぎない彼らは森林火災においては後からやってきたホットショットの隊の指揮下に入らざるを得ないことに不満を抱いていた。先に着いて事の推移を見ていた自分達の判断が蔑ろにされ、思うような消火活動が出来ない状況から抜け出したかったのだ。

弛まぬ訓練や理解者の協力もあって前例のない地方自治体の消防隊からホットショットへの昇格を果たし、シーズンに入りあちこちで発生する山火事の対応に駆け回りながらも順風満帆に思えた彼らがどうして山火事では過去80年で最大とされる犠牲を出してしまったのだろうか。

このヤーネルヒル火災、隊員20名中19名が命を落とした山火事の調査では隊の判断ミスや無謀な行動が原因ではないとされており、天候の変化に伴って急激に火災の規模が広がり、退路を断たれた結果として起きた事故となっている。豊富な経験と確かな訓練を積んだプロフェッショナルであっても避けられない天災であったという。

結果として、観測役を命じられて本隊から離れていた一名を除いて防火テントに身を隠したものの炎をやり過ごす事は出来ず19名の隊員が殉職した。このあまりの結末に我が目を疑った人もいるようだ。そこは生存を絶望視する我々の前に颯爽と帰還する彼らの姿が……というところではないのだろうかと。

しかし、この映画は実話を元にしたものである。彼らが命を託した防火テントは250度程度、それも瞬間的にしか熱を防ぐ事は出来ず、彼らに襲いかかった炎は1000度に達していたとされている。

全くの娯楽をこの映画に求めた人にとってはあんまりな結末かもしれない。これまでその苦楽に共感した彼らが最大の山場で何の活躍をする事もなく無情に炎に飲み込まれてしまうのだ。私自身もこの結末に納得出来ず、どうしてそうなってしまったのかと情報を探し回った。何か他に彼らが助かる方法はなかったのだろうかと。

だが、そんな中でふと思うことがある。この作品はその為にあるのではないだろうか。分かりやすい答えがあって、腑に落ちる結末が用意されているばかりが映画ではない。おそらくこの物語はスッキリして忘れなくてもいいものなのだ。

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