亜挫木太郎について

 先日、Kindleダイレクトパブリッシングを利用して自分の書いた小説を出版することとなった。このサービスは登録するだけでいつでも自分の本を出版出来る素晴らしいシステムだ。お陰で自分の小説を世に出すという夢への一歩を踏み出せたように思える。

 せっかくなので宣伝の意味もこめて作品についてブログにも書いてみることにした。読んでもいない小説のあとがきを読まされるのも苦痛であるだろうから、あまり作品の詳細には触れずに話していきたい。

 この悪意喰らいの亜挫木太郎という作品には私の人生に対する怒りと渇望が大いに込められていると思う。両親の居ない主人公、母子家庭で母親からほぼ見捨てられているヒロインと妹というメインキャラクターの背景は私の育った家庭環境の投影といってもいいだろう。特別な能力も出自も持たず、ヒロインと出会わなかった世界の主人公が私なのである。作中に主人公の敵対者として登場するキャラクターがいるのだが、私の中ではこの彼こそアンチ主人公であり、より私を投影した人物として描写されている。

 私は作中のイメージを膨らませるために実際に拙い絵でそれぞれのキャラクターを描いてみることがあるのだが、正直他のどのキャラクターより彼を描くのが難しかった。より自分に近しいキャラなだけあって造形がリアルになってしまうのだ。まさに私の業を一身に背負って生み出された彼は本当に救いようのない人物に仕上がっている。世間知らずの癖に世の中のことを分かり切った気になっており、自分は何か特別な才能を隠し持っていると根拠のない自信に縋って上手くいかないことを全て今の社会の所為にしている。自意識過剰で思い込みが激しく、人の言うことにはまず耳を貸さない。これら若かりし日の自分の悪いところを煮詰めて暴走させたような仕上がりとなったこのキャラクターだが、それだけに妙な愛着を感じてしまっているのも事実である。

 作中での彼は敵対者でありなにより反社会的な行為に手を染めた犯罪者として登場するので、最終的にその考えの全てを否定されて倒されてしまうのだが、もしかすると私はこれこそを作品の中で描きたかったのではないかと思うことがある。私を元にして成功した主人公によって、私のまま失敗した彼が打倒されるのだ。実際に執筆中に最もカタルシスを感じたのがこの場面であったように思う。あまりよろしくない環境で育った私が社会に対して抱いていた憤りが、どうして自分を中途半端に生かしているのだということだったからだろう。いっそ一思いに叩きのめしてくれればこんなに惨めで苦しい思いをせずに済むのに。過日、抱えていたこの様な不満とそれを理由に正当化していた自分というものに作品を通して決着を付けたかったのかもしれない。

 そして、そんな私を叩きのめしてくれる相手として相応しいのは私と同じような環境で育ち、私にないものを手に入れて成功した主人公をおいてほかにいないと思うのだ。

なるおの活躍が読める悪意喰らいの亜挫木太郎はAmazon Kindleにて発売中。

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