教えて！コタエル先生！　当たり前のことが出来ません

Q.
成功する方法は一つも分からないけど失敗の仕方なら誰よりも知っていると豪語するコタエル先生に質問です。僕は高校二年生の男子です。子供の頃から不器用で要領が悪く、周りが当たり前にしていることが上手く出来ません。
自分でも直さないといけないと思って努力しているのですが、僕の遅々とした成長より求められるレベルの上がるペースが速いせいかいつまでも周りに合わせることが出来ずにいます。
他の人からすればどうして僕がそんなことも出来ないのか分からないらしく、「普通にすればいい」とよく言われるのですが、僕としてはその「普通」のやり方が分からず余計に焦って失敗してしまうことが多いです。
小・中・高とそんな失敗体験ばかりを積み重ねてきたので、最近では自分のような役立たずは社会に必要ないのではと本気で考えるようになってきました。当たり前のことが出来ない自分が情けなくて悔しくて、いっそ消えてしまいたくなるんです。
先生は失敗ばかりしてきたという割に色々な職業経験をされてますよね。自分の失敗談を笑い話に出来る先生でも、未経験の仕事を選ぶのは勇気がいるんじゃないかと思います。もしそうなら、どうすれば失敗を恐れない勇気を出せるのか教えてください。

A.
これは久々に本気で答えるべき質問がきてしまいましたね。私自身、普通にやれと言われて出来るなら苦労はしてこなかった人間です。農業をやっていた頃は自分のような不器用な人間を集めて一旗揚げてやろうと目論んでいたものですよ。
ヘルシーな鹿肉でジャーキーを作ってワンちゃんの健康的なおやつとして売り出すというビジネスプランを密かに温めていたのです。ええ、私が営農していた地域はとかく鹿による農作物被害が酷くて、せっかく育てた野菜を食い荒らすこいつらを逆に食い物に出来ればどれだけ素晴らしいだろうと考えたわけです。

もちろん、そんなものは計画の段階で頓挫しましたよ。よく考えてみればその地域は鳥獣保護の条例が敷かれていまして、商業ベースで鹿を狩猟することはどうやら難しいんですね。仮にそれをクリアしたとして、鹿の解体や加工を行う施設はどうやって確保するのか。どうにか融資を受けられたとして、鹿ジャーキーで借金を返済していけるのか。少し想像しただけで問題というのは山積みなわけです。

要するに私が何かをしようとしたって失敗する予感しかしないんですね。でも、あれこれ考えるのって楽しいじゃないですか。何一つ上手く出来ない自分が一山当てて周りをアッと驚かせるんです。私達にとってこれほど痛快なことがありますか？これまで失敗続きだったけど、次はその分誰よりも上手くいくかもしれません。
そりゃあ怖いですよ。私のような当たり前のことも出来ない上にコニュニケーション能力にも難のある人間が、未経験の仕事に飛び込んだって上手くいくはずがありません。実際、そのどれも上手くいかなかったから辞めてきたんですからね。
でも、普通に考えたら分かることも分からないのが私でありあなたではないですか。なんでもやってみないと分からないんですよ。

なので、私は失敗を恐れないのではなくそれしかやり方を知らないからそうするしかないというのが正解ですね。残念ながら、あなたもまた生きていく上でその恐怖と戦っていかなければならないかと思います。
ですが心配はいりません。どれだけ失敗を重ねていっそ消えたくなったところで別に死にはしませんから。それは実際にその道を辿ってきた私が自信を持って保証します。

最後に、周りと同じように普通にやって出来ないのであれば自分のやり方で上手くいく方法を見付けるしかないのだと思います。私の場合は自信がないことをやらなければならないときはネットを漁って納得いくまで調べ尽くします。こうすれば上手くいくなんて素敵なビジョンを掴めなくても、逆に自分が失敗しそうな要因をことごとく潰してしまえばいいのです。
あなたもそうかと思いますが、私もぶっつけで説明されて「ハイやって」と言われてもとても出来ない人間なのです。ならばやらされそうなことを予測して対策していくしかないでしょう。

どうして周りが当たり前にやっているようなことでそんな手間を掛けなければならないのかと思うかもしれませんが、それが私たちにとって「普通にやる」ということなのです。少なくとも私はそうすることで最低限の自信を補ってきたように思います。
とりもなおさず自分を知ることから全ては始まるのですよ。その意味においてあなたは私より早くその一歩を踏み出しているのではないでしょうか。なぜなら、高校時代の私ときたら自分が何一つ人並みに出来ないことに気付いてすらいなかったのですから。
その事にいち早く気付いたあなたの今後の奮闘とご活躍を心より祈っています。