オリジナル小説ご依頼「とくべつなブルーベリー」

現在、ココナラにてオリジナル短編小説執筆を出品しております。今回は娘さんの一歳の誕生日に贈る絵本のシナリオ作成という素敵なご依頼をいただきました。お客様より許可をいただきましたので、執筆した作品を掲載いたします。

ご依頼内容:娘さんの1歳の誕生日お祝いに絵本を作るための物語の制作
ご希望
●「月、ブルーベリー、黒猫と白猫」を登場させること
●「いないいないばあ」と娘さんが口にする「てぃこてぃこてぃこ」という音を物語に織り交ぜて欲しい

 とくべつなブルーベリー

 森の動物たちは真っ暗な夜を柔らかく照らしてくれるお月様が大好きです。嬉しくて笑顔のときも、悲しくて泣きたくなるときも暖かく笑いかけてくれるから。お月様の「てぃこてぃこてぃこ」という不思議な笑い声を聞くと動物たちはみんな優しい気持ちになるのでした。

さて、このところ動物たちはそわそわと忙しく、けれど嬉しそうにしていました。なぜならもうすぐお誕生日を迎えるお月様へのプレゼントの準備をしているのです。
そんな中、白猫と黒猫のふたりは何をプレゼントすればいいか思いつかず、一緒に考えても答えが出ずに困っていました。

ふたりで悩んでいても時間が過ぎていくばかり。
「こうなったらパンダさんに聞きにいこう」
 じっとしていることが嫌いな黒猫は白猫の手を引いて森で一番物知りなパンダに会いにいくことにしました。
 黒猫と白猫がパンダの家にいくと、そこは家というより図書館でした。家の中が本だらけなので、他の動物たちからパンダは笹ではなく本を食べていると言われているくらいです。
「やあ、ふたりともどうしたんだい?」
本棚の一つからひょっこり顔を出したパンダが聞いてきます。
「ああ、待って。さてはお月様へのプレゼントのことかな?」
物知りなパンダはふたりがここにきた理由もお見通しです。
「そうなんだ。ふたりで考えてみたけどいいものが思いつかなくて」
「パンダさんはなにをプレゼントするの?」
ふたりが口々にいうとパンダは嬉しそうな顔でこたえます。
「ぼくはこの世で一番長い本をプレゼントするよ。なにせお月様は長生きだからねぇ。読んでも読んでも終わらない特別な本さ」
 パンダの素敵なプレゼントを聞いてふたりは不安になりました。自分たちにそんなプレゼントが用意出来るか心配になってきたのです。
「ぼくたちもそんな特別なプレゼントをみつけたいんだ。パンダさん、なにかいいものはないかな」
うつむいてしまった白猫のかわりに黒猫がききました。
「そういえば、お月様は特別なブルーベリーをプレゼントされてとても喜んだことがあるそうだよ。でも、それはとても昔のことでどんなブルーベリーだったかはぼくにもわからないんだ」
パンダの話を聞いて白猫はあきらめかけました。でも、黒猫は逆に大喜び。
「ありがとうパンダさん。ぼくたち、その特別なブルーベリーを探しにいくよ」
そういうと、白猫の手を引いてパンダの家を出ていきます。

「物知りなパンダさんも知らないブルーベリーをぼくたちで見付けられるかな」
 先をいく黒猫を追いかけながらも白猫の胸の中は不安でいっぱいです。
「大丈夫。ぼくたちで力を合わせればきっと見つかるよ」
でも、黒猫の元気いっぱいの笑顔を見るとお月様のために頑張ろうという気持ちが湧いてくるのです。
それからふたりは毎日ブルーベリーを探しに出掛けることになりました。他の動物たちも頑張る二人を見てブルーベリーの木がある場所を教えてくれます。お陰ですぐに森中のブルーベリーを集めることが出来ました。
「ねえ、あそこにもいってみようよ」
黒猫にいわれて白猫は驚きます。
「え? でも、あそこは」
そこは森の中でまだふたりが探していない場所でした。危ないところだから森の動物たちは誰も近付かないようにしているのです。
「君がいかないなら、ぼくひとりでもいくよ。特別なブルーベリーはあそこにあると思うんだ」
黒猫はもう行く気まんまん。こうなったらなにを言っても聞きません。白猫は慌てて走り出す黒猫を追いかけました。

 こうしてふたりは森のはずれにある道にやってきました。その道は崖から落ちてきた大きな岩でとても細くなっています。通ろうとするとがらがらと岩が落ちてくるので、森の動物たちはガラガラ道と呼んでおそれているのです。
ほら、今もカラカラと崖から小さな石が落ちてくる音が聞こえてきます。今にもガラガラと大きな岩が落ちてきそうで白猫は怖くてしかたありません。
「さあいこう。急いで通れば大丈夫だよ」
そう言うと黒猫は走り出してしまいました。ピョンピョンと転がる岩を飛び越えて、道を塞ぐ大きな岩の隙間をスルスルと抜けて先へ先へといってしまいます。白猫もおっかなびっくり黒猫のあとを追いかけます。
ガラガラ道を抜けた先には青々とした草原が広がっていました。先についた黒猫は生い茂る草木の中にブルーベリーの木を見付けて大喜びで駆け寄ります。持ってきた袋にいっぱいのブルーベリーを摘んで大満足。
さあ帰ろうとしたそのときです。

 ガラガラガラ ドーン!

 後ろで大きな音がして黒猫はびっくりして跳び上がりました。見ると、ガラガラ道が落ちてきた大きな岩で埋まってしまっています。
おいてきた白猫のことが心配になって黒猫は大急ぎで駆け戻りました。
「おーい! 白猫くん、大丈夫⁉」
目の前を塞ぐ大きな岩に向かって叫びます。
「大丈夫! でも、これじゃあ黒猫くんがこっちに戻れないよ!」
返ってきた白猫の声に安心した黒猫でしたが、こんどは自分が大変なことになっているのに気付いて不安になってしまいます。

 道は落ちてきたいくつもの大きな岩が高く積み上げられてとても登れそうにありません。もう森のみんなのところに帰れないと思うと悲しくなって黒猫はしくしくと泣き出してしまいました。
「泣かないで黒猫くん。きっとぼくが助けるから」
岩の向こうから白猫の励ます声が聞こえてきます。でも、その声は怖くて震えていました。
「危ないよ。また、岩が落ちてきたら」
崖の上からはまだパラパラと小石が落ちてきています。黒猫は白猫が心配になって言いました。
「うん。怖いよ。でも、黒猫くんをおいて逃げる方がもっと怖いんだ」
白猫はそう言うと岩の向こうで動き出す音が聞こえてきました。黒猫は白猫の無事を祈るしかありません。

 どれくらい時間が経ったでしょうか。黒猫の足元で地面がもこもこと盛り上がりました。驚いて飛びのくと、ボコッと穴があいて白猫がぴょこっと顔を出しました。岩の下の土を掘ってトンネルを作っていたのです。
「お待たせ。さあ、急いで帰ろう」
穴の中から笑顔をみせる白猫に黒猫はすっかり安心して抱きつきました。
「ありがとう白猫くん。きみが一緒にいてくれてよかった」
「どういたしまして。それはぼくも同じだよ。きみが居てくれたお陰でぼくもお月様へのプレゼントを用意できたんだ」
ふたりはそう言い合って笑い合うと土のトンネルをくぐり、ガラガラ道を抜けて無事に森へと帰っていきました。

 大きなかごに沢山集まったブルーベリーを見てふたりは大満足です。いよいよ明日はお月様のお誕生日。
「この中にきっと特別なブルーベリーがあるに違いないよ」
くたくたになりながらも黒猫が嬉しそうに言いました。
「そうだね。でも、もしなかったらどうしよう?」
それに白猫は不安そうな顔をします。
「それだったら、お月様に聞いてみようよ。どれが特別なブルーベリーかわかったら、それをもっとたくさんとってきてプレゼント出来るじゃない」
黒猫の前向きなことばに元気をもらった白猫は明るい顔になりました。
「うん、それがいいね。そうしよう。ちょうどもうお月様が出る時間だよ」

 ブルーベリーを集めているあいだにすっかり暗くなっていました。ふたりがお空を見上げると曇っていてお月様が見えません。一晩中、顔を出しているとお月様が疲れてしまうので、それを心配した雲がこうしてときどき隠してくれるのです。
でも、大丈夫。ふたりは夜空を見上げて「いないいない」と声を掛けました。すると、雲の隙間から「ばあ!」とお月様が顔を出します。柔らかな明かりがふたりの顔を照らしました。お月様はすぅーとお空から降りてきます。

「こんばんは。お月様に見てほしいものがあるんだ」
「これなんだけど、お誕生日のプレゼントに」
黒猫が声をかけ、白猫がブルーベリーの入ったかごをお月様に見せました。
「あら、それは私の大好きなブルーベリーね」
てぃこてぃこてぃこと嬉しそうに笑うお月様を見てふたりは笑顔になりました。
「森中から集めてきたんだ。この中に特別なブルーベリーはあるかな」
お月様がブルーベリーを一粒ずつ食べて確かめていきます。
「この中に私の知ってる特別なブルーベリーはないみたい。でも、どれもとても美味しくて嬉しいよ。ありがとうふたりとも」
てぃこてぃこてぃこ、とお月様は笑うとお空に帰っていきました。

 ふたりはお月様が喜んでくれたことに安心する気持ちが半分、特別なブルーベリーをみつけられなかったことを残念に思う気持ちが半分のままお誕生日の日を迎えました。
「やあ、ふたりとも。ずいぶんたくさん立派なブルーベリーを集めたね」
そんなふたりにパンダが声を掛けてきます。
「でも、お月様に聞いたんだけど、この中に特別なブルーベリーはなかったんだ」
黒猫は悲しそうにこたえました。白猫もその隣でうつむいてしまっています。
「それは残念だったねぇ。でも、そんなにたくさんいろんなブルーベリーが集まったんだから、それを使ってパイを作ったらどうかな? そうすればきっととても美味しいブルーベリーパイが出来上がるさ」
パンダにそう言われて落ち込んでいたふたりの気分は明るくなりました。それはとても素敵なことに思えて、家に帰るとさっそくふたりでパイを作りました。

 こうして、夜がやってきました。
森の動物たちが用意したプレゼントをもって森の広場に集まっています。準備が出来たら声を掛けることになっているので、お月様は雲のうしろに隠れて待っていました。
「いないいない」
みんなで空を見上げて声を掛けると、
「ばあ!」
雲の隙間から顔を出したお月様がすぅっと広場の真ん中に降りてきます。

「てぃこてぃこてぃこ。みんな今日はありがとう」
そんなお月様に森の動物たちは「お誕生日おめでとう」とプレゼントを渡していきます。
そして、黒猫と白猫の番がやってきました。森中から一生懸命集めたブルーベリーを使って心を込めて作ったパイです。
「お月様、お誕生日おめでとう。特別なブルーベリーは見つからなかったけど、その代わりにパイを作ってみたんだ」
ふたりが差し出したパイを一切れとって口に入れたお月様は、
「てぃこてぃこてぃこー!」
と、大喜びして今日一番の笑顔を見せました。

「ああ、嬉しい。これは私が小さなこどものころにおくってもらった特別なブルーベリーと同じ味がするよ」
 お月様は感激しながらパイをもう一口。白猫と黒猫が大好きなお月様のために少しでもいいものをと森中から探し集めたものが一つになって出来たのが、特別なブルーベリーだったのです。
「ありがとう。今日は本当に最高のお誕生日だよ」
てぃこてぃこてぃこ、と笑顔のお月様を見て黒猫と白猫は大喜び。ふたりの頑張りを見ていた森の動物たちにも笑顔が広がります。

 この日はふたりが沢山集めたブルーベリーで作ったパイをお月様と森の動物たちで分け合ってとても素敵なお誕生会になりました。

お子さまへのギフトとしての物語執筆も含め、オリジナル小説執筆は以下のリンクにて請け負っておりますので、お気軽にご相談ください。

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